ひとしきり雑談のつづいたあと、言葉が途絶えた。

ひとしきり雑談のつづいたあと、言葉が途絶えた。容一が、小浜亀角の大雪山の絵に目をやり、扶代と章子は花瓶のチューリップに目をやった。金井は何かいいたげだった。金井がひときわ緊張した表情になり、両膝に手をおいた。容一も扶代も章子も、その金井に目をやった。
「あの、実はぼく、章子さんとおつきあいを……結婚を前提としてのおつきあいをおねがいしたいと思って……」

三浦綾子『果て遠き丘』「春の日 四」
『果て遠き丘』小学館電子全集

オーディオライブラリー『果て遠き丘』朗読:七瀬真結

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  3. と、その時電話のベルが鳴った。ハッとしたように章子が受話器を取った。 「もしもし、橋宮でございます。あら、政夫さん?」

  4. 八歳のころから、母が家を出て行くまでの二年ほど、香也子は祖母のツネに茶を習ったことがある。

  5. 「ねえ、わたしたち三人は、水入らずよね。血が通っているんですもの。章子さんや小母さんとは、ちがうわよねえ」

  6. 容一が保子の潔癖性に手を焼いたのは事実だった。