「卓球ができれば、立派なもんですよ。わたしは自転車にも乗れない」

「卓球ができれば、立派なもんですよ。わたしは自転車にも乗れない」
容一は笑った。運動神経の鈍いことが、二人に親近感を与えたようだった。
「人は見かけによらないものですわね」
扶代はのんびりと笑い、
「ね、金井さん、橋宮は小児科医のようだって、ときどきいわれますのよ。そう見えまして?」
「なるほど、ぼくもそう思ったところです」
金井の語調は、世辞には聞こえなかった。章子はやさしく微笑した。
「医者に見えるなんて君……わたしは不器用で注射なんか打てないよ。それに、ぎゃあぎゃあ泣く赤ん坊なんて、お手あげだよ」

三浦綾子『果て遠き丘』「春の日 四」
『果て遠き丘』小学館電子全集

オーディオライブラリー『果て遠き丘』朗読:七瀬真結

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