二十畳の応接間に、いま、橋宮容一と、その妻扶代、そして娘の章子が、英語塾を経営する金井政夫と談笑している。

二十畳の応接間に、いま、橋宮容一と、その妻扶代、そして娘の章子が、英語塾を経営する金井政夫と談笑している。窓から前庭の築山が見える。ひとかかえもある見事なアララギ、紫のエゾツツジ、真っ白な雪柳などが、きれいに磨かれた大きな一枚ガラスの窓のすぐ向こうに見えている。
右手の飾り棚には志野焼の壺、加藤顕清の女の胸像、イタリヤの大理石の花瓶などが、何の脈絡もなく、しかしひとつのまとまったふんいきの中に飾られている。
足もとには、ペルシャ製のバラ色の厚いジュータンが敷きつめられてあった。

三浦綾子『果て遠き丘』「春の日 四」
『果て遠き丘』小学館電子全集

オーディオライブラリー『果て遠き丘』朗読:七瀬真結

関連記事

  1. 「あの……わたし、いまお茶を点てていた恵理子の妹なんです」

  2. と、ビールを飲みながら、ふっと笑って、 「いやですねえ。昔の話をむし返して。

  3. 助手台に乗っていた祖母のツネが、うしろの保子と恵理子をふり返っていった。

  4. 香也子が、本当に生みの母を慕っているかどうか、容一には疑問である。

  5. その翌日のことだった。保子にいわれて、恵理子はゴミを焼きに外に出た。

  6. 駆けこむように家にはいってから、恵理子は自分の感情の動きにふっと笑い出したくなった。