「…………」  香也子は向かいの山を眺めながら何か考えているふうだった。

「…………」
香也子は向かいの山を眺めながら何か考えているふうだった。
「今度、香也ちゃんをつれてってやろうか」
香也子は鋭く整を見、
「冗談じゃないわ。わたしを置きざりにして行ったお母さんなんか、まっぴらよ」
切りつけるような語調だった。
「なあるほど、そういうご心境ですか。ま、無理もないな」
何かいおうとしたが、整はそういった。

三浦綾子『果て遠き丘』「春の日 三」
『果て遠き丘』小学館電子全集

オーディオライブラリー『果て遠き丘』朗読:七瀬真結

関連記事

  1. 金井が、香也子の両頬を手で挟んだ。そしてそっと唇を近づけようとした時だった。うしろで、けたたましくクラクションが鳴った。

  2. 香也子は椅子ごと、ぐいと扶代と章子のほうを向いた。

  3. いい終わらぬうちに、ドアをノックしてはいってきたのは、香也子だった。

  4. 「ここの中華料理はうまいね。実はこの前の日曜日、うちに客があってね。中華料理の手づくりをご馳走したんだ。それが意外とうまくてね。お前たちに食べさせてやりたいと思ったもんだから……」 「どなたがおつくりになったの」

  5. 「手があがったかね」コップにビールを注いでやりながら、容一がいう。

  6. 二人はいつしか頂上に出た。頂上にはテレビ塔があった。