「…………」  香也子は向かいの山を眺めながら何か考えているふうだった。

「…………」
香也子は向かいの山を眺めながら何か考えているふうだった。
「今度、香也ちゃんをつれてってやろうか」
香也子は鋭く整を見、
「冗談じゃないわ。わたしを置きざりにして行ったお母さんなんか、まっぴらよ」
切りつけるような語調だった。
「なあるほど、そういうご心境ですか。ま、無理もないな」
何かいおうとしたが、整はそういった。

三浦綾子『果て遠き丘』「春の日 三」
『果て遠き丘』小学館電子全集

オーディオライブラリー『果て遠き丘』朗読:七瀬真結

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