「まあ? 恵理子姉さんって、そんなに魅力的?」

「まあ? 恵理子姉さんって、そんなに魅力的?」
「だろうな。理知的で、やさしくてきれいで……」
「もういいわ」
「怒ることはないだろう。君の姉さんのことをほめてるんだよ」
「整さん、すべての女性は、わたしのライバルに変わり得るのよ」
きっとして、香也子がいった。
「なあるほど。大変なファイトだ」
ニヤッと笑った整に、
「わたし、十ぐらいのときのお姉さんしか知らないのよ。本当に整さんのいうとおり、素敵な女性かしら」
「君って忙しい人だな。すべての男性は恋人に変わり得るし、すべての女性はライバルに変わり得る。それじゃ、心の休まるときがないだろう」
「いいえ、そう思うから、わたしには人生が楽しいの」
香也子は不意に子供っぽく笑って見せた。

三浦綾子『果て遠き丘』「春の日 三」
『果て遠き丘』小学館電子全集

オーディオライブラリー『果て遠き丘』朗読:七瀬真結

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  1. 旭山は、恵理子たちの家から車で二十分ほどのところにある美しい小山である。

  2. じっと恵理子を見つめている香也子の姿を、ツネと保子が息を殺して眺めている。

  3. ジンギスカン鍋をつついている者、輪になって歌をうたっている者、桜の花の下には、何十組とも知れぬ人の群があった。

  4. 香也子は二人を見ると、ついと顔をそむけた。

  5. 静かに戸をあける。鈴がリンリンと澄んだ音を立てた。

  6. 「ここの中華料理はうまいね。実はこの前の日曜日、うちに客があってね。中華料理の手づくりをご馳走したんだ。それが意外とうまくてね。お前たちに食べさせてやりたいと思ったもんだから……」 「どなたがおつくりになったの」