絹子が去ってから、整がいった。 「章子ちゃんの恋人だろう、くるのは?

絹子が去ってから、整がいった。
「章子ちゃんの恋人だろう、くるのは? 遅れようと早くなろうと、香也ちゃんには関係ないだろう」
「整さんはのんき坊主ね。すべての男性は、わたしの恋人になり得る可能性があるのよ」
「まあ、そりゃそうだ。ただし、ぼくを除いてだろう」
「あら、わからないわ。わたしだって、整さんを好きになる可能性はあるし、整さんだって……」
「ぼくのほうは、香也ちゃんを恋人にする心配はないね」
「まあ、失礼。わたしってそんなに魅力がない?」
「大ありだよ。もっとも、君の姉さんの恵理ちゃんよりは落ちるがね」
整は健康な口にコーヒーカップを当てて、うまそうにコーヒーを飲んだ。

三浦綾子『果て遠き丘』「春の日 三」
『果て遠き丘』小学館電子全集

オーディオライブラリー『果て遠き丘』朗読:七瀬真結

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  3. 「そうね、香也ちゃんのいうとおりね。香也ちゃんをひとりおいて、お母さんとわたし、橋宮の家を出てしまったのですものね」 うるんだ恵理子の声が返ってきた。

  4. 「いつかねえ、旭山で恵理子のきもの姿を見たよ。いい娘になったね」 「…………」 「どうだね、一度お父さんと食事でもしないかね」 「……ハイ……でも」

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  6. 香也子が先に立ち、橋宮容一と妻の扶代、そしてその娘の章子があとにつづく。