鳶の啼く声に、小山田整が空を見あげていった。

鳶の啼く声に、小山田整が空を見あげていった。
「鳶の舞うときは、天気が変わるんだってさ」
五月の陽に、庭の芝生が輝いている。
「整さんは、物知りね。一分間に六千も流星が地上に降るとか、鳶が啼いたら何とやらとか」
香也子が整の目をのぞきこむように、いたずらっぽく笑う。
「それほどでもないけれどね」
「つまり、整さんは退屈してるってことね。恋人がないってことね」
「こいつ」
整が殴る真似をし、香也子が椅子を立って逃げる真似をした。芝生に香也子の影が動く。
「香也子にだって、恋人はいないじゃないか。章子ちゃんには、もうできたっていうのに……」
今度は香也子が殴る真似をし、整が逃げる真似をする。

三浦綾子『果て遠き丘』「春の日 三」
『果て遠き丘』小学館電子全集

オーディオライブラリー『果て遠き丘』朗読:七瀬真結

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